介護施設&準介護施設 その2
期待できない医療保険。介護保険か?貯蓄か?
メディケアは、熟練介護施設(SNF)で介護を受ける患者を対象としているため、中間介護施設や、介助があれば歩行、ベッドの寝起き、食事、着替え、入浴、薬の飲用が出来る介助ケアはメディケアの対象にならない。
メディケアの受給資格は、
1、毎日のスキルドケア(熟練介護)を要する
2、熟練介護施設に入所するまで最低三日間連続していた
3、病院で受けていた治療と同じ治療を受ける
4、退院から三十日以内に入所する
5、熟練看護婦や熟練リハビリサービスが必要
といった条件を満たさなければならない。
メディケア・パートAは100日まで熟練介護施設(SNF)で熟練介護が受けれる。
1日〜20日まではメディケアが100%負担、21日〜100日までは患者が一日分として95.5ドル(1998年度〕負担となり、101日目からの介護は患者の100%負担となる。
また、メディケアは在宅介護にも条件を満たした場合、適用される。
メディケア認可の公私経営の医療機関が、医師の指示の下で、熟練介護ケア(パートタイム、断続的熟練ケア)、フィジカルZラピー、スピーチZラピーや他のセラピーが必要と認定された患者の自宅で行う。
車椅子などの耐久性のある医療機器は80%メディケアが支払う。
こうして見ると、重症患者以外ではメディケアでは適用されない。痴呆症やアルツハイマー症といった目が離せない状態の患者や、寝たきりように長期間介護が必要な患者には、メディケアは期待出来ないことになる。
現在、全米で400万人を超えるアルツハイマー患者がおり、2020年にはこの数字が3倍に増えると推定されている。
アルツハイマーは80才〜85才の年令層に多く発病し、85才以上では2人に1人はかかると予想されている。
ちなみにアルツハイマー症は長期の介護を要する病気である。
また、全米健康保険協会の調査によると、65才以上の人の46.8%は死亡するまでに、何らかの形で長期介護が必要になると見ている。
以上の事からハワイ州の場合、介護施設のお世話になるとすると、全米の中でも条件が悪いことになります。
ハワイでは介護施設のヘッド数は全国で65才以上の方1000人につきベッド数が56.7に対し、ハワイは1000人につきヘッド数がなんと25と半分以下で、ウェイティングリストに入居希望者がずらりと並び、ベッドの空きを待っている状態で、実際に入居となるとかなり病状が悪化してからという事になってしまう。
それゆえ、介護施設に居る日数も全米平均が4年以下に比ぺ、ハワイは平均が2年と短い。
また、ハワイは日本とよく似て、家族依存が高い文化背景のため、家族が介護するケースが他州より高い。
他州より介護施設数が少ない事や高価な不動産事情、物価高により、ハワイの場合、介護施設に入居するだけで年間5万〜8万ドルと非常に高く、逆に全米では2万〜10万ドルと幅が広く選択も広い。
在宅介護人への支払いが介助婦、介助士で時給20ドルから25ドル、看護婦なら時給35ドル前後はかかるというから1か月の支出はすごい額になる。
この春に亡くなったH氏は三年前に脳溢血で倒れてから、何度か入退院を繰り返し、自宅療養をしていた。ところが、半年前から病状が悪化し、24時間看護を必要とするようになった。奥さんのBさんは仕事を持っているし、2人の子供の面倒もみなけれぱならないので、専業で看護をすることも出来ず、熟練介護婦に来て貰った。
1か月に支払った額はなんと!1万5千ドル。
経済的にも精神的にも限界を感じたBさんは、24時間看護をしてくれる介護施設にご主人の介護を頼んだ。
オアフ島の数か所の介護施設を訪ね、H氏が未だ手足に後遺症が残っているため、セラピーに評判の高いC介護施設を選んだのだった。
費用は1か月4千5百ドル(これでも安いほうだった)。
3度の食事、身体を拭いてくれる(入浴は週一回)、歯磨き、ベッドメイキング、エンターテイメント、セラピーが料金に入っているが、備品はすべて有料。また医師の往診は2か月に1回で、急に熱を出した夜も医師の往診はなく、H氏の主治医だったO医師に連絡し、主治医から施設の医師に連絡し指示を仰いだという。
こうしているうち、ある夜に肺炎を起こし病院に移され病院で死去した。介護施設の滞在期間は4か月。
「家族としてナーシングホームの介護に満足したわけではありませんが、じゃ、私が仕事を辞めて看護するというわけにはいきません。自宅療養している時に、介護というのは愛情だけでは出来ない事がわかりました。ベッドでの寝起き、車椅子から車への移動にしても若くない私にとって重労働で、私も病気になりそうでした。また素人の介護は慣れていないので病人自身にも負担がかかります。家族が介護出来ない場合、ナーシングホームで看てもらうしか選択がないのです」とBさん。
治療、投薬、入院の費用は医療保険で負担してくれるが、長期療養となると自己負担になるため、経済的負担も心労の種になってBさんを覆いかぶさった。まして長期介護保険に加入していない70才のH氏の場合、Bさんが負担し、この数年に使った看護のための人件費、介護施設への費用などは3万ドル以上を超える。
幸いな事にBさんには支払えるだけの蓄えがあったからよかったものの、何年も介護施設暮らしが続くと、どうなるのか、、」主人の回復を祈りながら心配する毎日だったと、当時の心痛を語る。
フロリダ州に住む知人夫妻は介護施設を兼ねたリタイヤメントRミュニテイに最近入居した。自宅を売却した20万ドルをその施設に寄付し、毎月の費用は20万ドルから捻出されるという。しかし、20万ドルがなくなった後の事を考えると不安があると語っていた。
当時は長期介護保険は新しく一般に認識されていなかったので、加入者は少なかったため、長期介護資金の割合は少ないが、今後、長期介護保険で賄う率が高くなるだろう。
日本で介護保険が来年から実施されることから、ハワイに住む日本人の間から、アメリカの長期介護保険に関心を寄せる人が増えているという。
私事ではありますが現在、私は日本の政治に携わっており、大阪市でもこの問題が大きく取り沙汰されております。(ご質問などがございましたらご遠慮なくどうぞ!)
aloha@hawaii.ne.jp
川畑まで。
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11/10/15 『長期介護が必要になったらあなたならどうする』パート1