ハワイ・ツーリズム・オーソリティ(HTA)がガイドラインまとめる
ハワイの基幹産業である観光業が低迷を続けて久しい。その観光業の活性化をめざし主導・管理するハワイ・ツーリズム・オーソリティ(HTA)が結成されて六か月以上が過ぎた。従来この任に当たってきたHVCB(ハワイ観光コンベンション協会)は半民半官で、たえず予算不足で充分な業務が出来なかったという。HVCBに代わるHTAは年間6千万ドルという特別基金を与えられ、ハワイの新しい観光業の舵取りを命じられた。
HTAは世界的に有名な市場調査会社のブライスワターハウスークーパーズ社に戦略構想を、またKPMG社には観光客向けの新しい産物開発についてのガイドラインの作成を依頼した。両社は各分野について調査するとともに延べ2千2百人に意見を聞き、〈ケ・クム〉というリポートにまとめた。
HTAはこの〈ケ・クム〉を基に、ハワイ全島を訪れて前後14回に亘って地元民と懇談し、最終案を8月中旬に完成させるという。
2社がまとめた膨大な〈ハワイの明日の観光業のガイドライン〉を要約して、前後2回に分けて紹介する。
〜前半〜
HTAが組織された経緯と目的
ロバー ・フイッシマンHTA事務局長は 、『この〈ケ・クム〉はガイドラインですから、幅広い枠でつられています。具体性に欠けていると云われる かも知れませんが、細目についてはこれからです。
幅広い観光業の現状を洗いだし、問題点と対策をまとめたのが(ケ・ク ム)です。〈ケ・クム〉に沿って具体的プロジェクトを作り上げるのがHTAの使命です。うまくまとめられていると思いますよ」と自画自賛する。
この(ケ・クム)というのはハワイ語だが、次の様な意味がある。
KE KUMU(ケ・クム)
ハワイ語には時には多くの意味を持っており一般的には先生と言う意味だが、他に次のような意味も含まれている。
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◎1959年のハワイ立州以来、観光業が経済の根幹を担ってきた。観光業が全てではないが、観光客の消費はハワイ州の経済、雇用の主流となった。それには、ハワイの自然環境と文化的要素が重要な役割を果たしてきた。
1991年頃からその観光業に陰りが見えはじめた。湾岸戦争、世界的各観光地との競争、アジア経済の不安、ハリケーン・イニキなどが、大きな要因となった。
1998年にはHTAが組織され、それに伴いいくつかの条件が揃えられた。
◆ホテル・ルーム税を7.25%に増税。タイム・シェアリングも観光業に組み入れられた。同税の2.75%を観光特別基金に当てる。
◆13人の理事からなるHTAは政府機関から独立運営される。HTAの使命はハワイの風土と島民の歴史、文化が基盤となり構成される観光業の経済目標をどの様に達成し、継続していくことである。そのためにはビジネス(経営者)的判断を優先し、税金(基金)の有効な用途を指導、管理する。
先ず、2005年までの目標として、観光業の経済成長率を4.6%と設定する。
次の7頃日は速やかに実践する。
1、コミュニティ、政府関連機関と(密なる関係を維持。)
2、マーケテイング
HTAはハワイを観光地としても世界でも有数の希少価値をすでに揃えていると確信して、より以上の活性努力を続けることを惜しまない。
ハワイ諸島はパラダイスだ。湿暖な気候、切り立った山々、熱帯雨林、死火山と活火山、澄み切った清流に野生物と自然美に思まれた天地である。
南太平洋孤島のハワイの観光業は汽船で来たマーク・トウェインやロバート・ステーブソンの百年前に遡る。以後いろいろな変遷があった。
1959年の立州以来、観光業はハワイ州の主幹産業になり、州民の生活から切り維せない位置を確保した。
(1)観光業は州民雇用口の原動力。3人に1人は観光業に従事し、直接型と間接型がある。
(2)観光客消費と観光業投資による経済的貢献。
世界旅行・観光評議会の1999年度報告書によると、ハワイ観光業は州総生産(GSP)の26%、総税収の27%を負担。観光業関連の税収人は次の 通り。
連邦、州の個人所得税=10億ドル
●消費税=3億5千万ドル
●ルーム税=1億5千万ドル
●レンタカー税=3千3百万ドル
全ての税金は一般会計基金に振込まれ、教育から衛生まで広範囲に利用されている。
(3)観光業はハワイの恵まれた自然環境、文化に負うところが多い。
全ての観光資源の保存と管理に配慮する。ハワイの観光業は1991年以来長期の低迷を続けているが、それ以前の好調時に代わる新しい革新約な施策を模索する。
グローバル経済がハワイ観光業を大きく塗り替えた現実にどう対応するか、大きな過渡期に直面している。
HTAの第一期目標を次の2点とする
(1)観光客の消費単価引き上げ
観光客消費額=1人の1日平均消費額X滞在日数X観光客数
観光客が多くの金を使う策を検討する
イ、既成観光施設のより効果的利用。
ロ、産物の開発と付加価値増加
ハ、多額消費者と長期滞在者へのアプローチ。
(2)年間4.6%の観光客消費増加を2005年まで継続。
〜後半〜
主要10地域で効果的宣伝の展開
ハワイ観光地をグローバルに宣伝するために、世界を主要10地域に区別する。(実際には9地域で、残りの一地域はハワイ・コンベンション・センター用の特異な戦略を細織する)
1、米本土西部、
2、米本土東部、
3、日本、
4、カナダ、
5、ヨーロッパ、
6、ラテン・アメリカ、
7、アジア他地域、
8、オセアニア、
9、その他、
10、ハワイ・コンベンション・センター。
ハワイ観光業界に最も多額のカネを落としてくれたのは、米本上西部の三十二億六千四百万ドルが一位で、二位の日本は三十二億一千四百万ドル、その差は五千万ドルである。(98年以降に日本が米本土西部を逆転して一位となると当時は予想された。しかし、実際には日本の不景気のあおりを受け、日本の客足の消費額もガタ落ちしている)
観光客1人の1回の旅行で使う額もヨーロッパがトゾプ、三位の
ラテン・アメリカ客が1,595ドルと健闘している。日本は西部に次いで五位に甘んじている。また、日本客の1人平均滞在日数5.5日をどうやって伸ぱすかが大きな課題である。
以下各地域別の評価と戦略である。)
1、米本土西部(西部12州、アラスカを含む)
同地域からの客数211万人は全客数の30.7%を占め、32億6400万ドルも31%と最も多い。
同地域は人口増加率も高く、景気も好調なことからリピーター用と初めての観光客用の二本立てで充実させる。ハワイヘ観光客数の動向の重要な要素となる航空便数の増加に注意する。
新しいアトラクションなどのPRで幅広い宣伝を心掛ける。春と秋の客足をどうやって伸ばすか、家族ぐるみの旅行計画の設定をどうやって作っていくか、というも大きな課題。インターネット一利用者の確保も重要。
同地域は5821万人の人口を抱えているが、その71%が地域外に旅行している。ハワイヘの観光は、そのうち5.1%しか来ていないが、客数と滞在口数を掛けた延べ観光客数は年間{97年度〕2000万人を超える。全体の35%になる。ハワイにとって最大手の得意先である。
ハワイ観光業界の成否は同地域の客足をどう仲ぱすかにかかっている。
2、米本土東部(西部十二州を除く残り38州)
同地域には2億人が住んでいる。しかし、州外旅行者数は7,300万人で3分の1弱、前の米本土西部の71%が州外旅行という数字がいかに高いかがうかがえる。一人当りの年間所得は29,200ドル(西部より僅かに300ドル少ないだけ〕。同地域からの年間延べ客数は1,500万人、これは全体の26%。延べ客数は第二位である。消費額の24億2,700万ドルは全体の23.4%になる。同地域の観光地としては、フロリダ、カリフォルニア、ラスベガス、カリビーン・クルーズ、ヨーロッパと多くの競合を持っている。ハワイヘの旅行時間も長いため、これまで積極的なPR活動は控えてきた。航空便の限定と旅行距雌の長さがネックになる。航空運賃のコミッションに上限が課せられたこともハワイには不利。
戦略として、
●PR活動の展開。
●旅費に見合う観光内容の充実。
●航空会社と提携し、途中経由空港の増加と運賃の低下を実現する。
●インターネットのプロモーション充実。
3、日本
日本の人口は1億2,600万人、1人当りの年間所得は33,300ドル。海外旅行者数は2,500万人。うちハワイを訪れた数は209万人で海外旅行者の8.4%、ハワイの年間観光客数の30.4%、年間の延べ客数は1,150万人で第3位。観光客消費額は32億1,400万ドルで米本土西部に次ぐ2位だが、不況が長期化し、観光客数と消費額に大きな影響を与えてきた。
日本人はハワイが好きという定評から、ハワイからの日本PRはこれまで航空会社や、旅行会社に任せていたところがある。
買物嗜好の変化もハワイ観光業界に大きな打撃を与え、対応にギクシャクしている。
■日本人観光客シェア維持には短期目的のPRをシーズンに含わせて工夫。
■日本民族に合わせたPRの工夫
■ハワイの位置付けの再確認。若者向けのスポーツ、アクティビティツアー、中高年向きの文化、教育環境ツアー、ホノルル多人種融合都市としてPR。すでに好評を得ているウェディング市場の維持。
■リピート客用のオプション・ツアーの充実。他島リゾートの日本人向けパッケージの整備、努力強化。
4、カナダ
カナダの人口は3,000万人余り、1人当りの年間所得は21,000ドル。海外旅行者は総人口の66%に当る1,990万人。うちハワイ旅行者は327,000人で1.6%、ハワイ滞在日数は1人平均12日で最も長く滞在している。
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